7ごあいさつ15歳の時に焼き物の世界に足を踏み入れ、陶磁器制作や絵の修行をしながら、幼少のころより慣れ親しんだ器と文様の世界に深く入り込んでいきました。工芸の世界は奥深く、到底全容を摑めるものではありませんが、私なりに努力をし成果を得ることもできました。そして、現代社会が失いつつある職人の執念のようなものを大切にして新しい陶磁器の世界を開拓したいと願うようになり、23歳の時に葉山有樹窯を開窯し、一心に精密な美の世界を追求して早や41年が経過しました。現代の多様な価値観に比べて、いにしえの工芸品に対する価値観は単純明快で、美は職人の技量と美意識と作品にそそがれた職人の労力によって明快に評価されたのです。百年・千年を経た優れた工芸品から学んだのは、真の創造は深く伝統に根ざし、真の伝統は過去の繰り返しではなく新たな創造の中にあるということでした。斬新な創造も、深く伝統に根をおろしていなければ一時の華で終わるでしょう。季節の花に水をそそいでやるように、千年の華には心血をそそがねばなりません。作品の大小を問わず、ひとつひとつに持てる技術の全てをそそぎ込み愚直なまでに質にこだわり続けてまいりました。これまでの歩みを纏めた作品展をご高覧に供するとともに自身の道しるべといたします。葉山有樹
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